疫学の話題:高木兼寛と森鴎外の脚気対策論争 〜栄養が原因か感染症が原因か〜
疫学の定義(広義)
原因や仕組み究明はさておき、何らかの良さそうな対策を探し出して実行してみる。その有効性を後で検証して、続けて行くべきか判断する。
という立場に立つ場合に、
「何らかの良さそうな対策」をどうやって探し出したらよいか、後で検証して続けて行くべきか判断するには具体的にはどう進めたらよいか、に関する方法論を疫学と呼ぶ。
疫学(広義)の適用される対象
対象(困ったこと)は、
- 社会事象(インターネット上の迷惑メール、諸々の犯罪)
- 政策課題(交通事故防止、少子高齢化対策)
- 生物(人間を含む)に関する問題、特に健康に関する問題
など
明治時代の日本に大きな影響を与えた疾患(病気)にはどんなものがあったか。
1.コレラ
2.脚気
3.結核
脚気はどんな疾患か (1)
脚気は、ビタミンB1が不足して起こる疾患で、全身の倦怠感、食欲不振、足のむくみやしびれ(末梢神経障害)などの症状があらわれる。
心臓機能の低下・心不全(衝心、しょうしん)を併発したときは、脚気衝心と呼ばれる。
脚気はどんな疾患か (2)
日本では平安時代以降、京都の皇族や貴族など上層階級を中心に脚気が発生した。
江戸時代の江戸では、精米された白米を食べる習慣が広まり、将軍をはじめとした上層武士に脚気患者が多く発生し、「江戸患い」と呼ばれた。
明治期以降、高度に精米された白米が普及するとともに多くの患者を出し、結核とならぶ二大国民病といわれた。
脚気はどんな疾患か (3)
1950年代後半には、国民の栄養状態全般が改善するととともにビタミンB1を含む栄養剤が普及したこともあって、脚気はほとんど見られなくなるが、1970年代、インスタントラーメンなどに極端に偏った食事をとり激しい肉体労働に従事する若者がこの病気にかかる現象がみられるようになった。
現在はそのような問題もほぼ解決している。
脚気は明治の日本人の各階層にどのような影響を及ぼしたか
- 軍隊(陸軍、海軍):白米兵食
- 一般民衆:江戸などの大都市で多発(江戸患い)
- 上流階級(例えば明治天皇)
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